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「苗字まで名乗りくさるか、いい度胸じゃ!」
藤吉郎さんは、嬉しそうに手を叩いた。
「よし、わしも名乗ろう。苗字などわしの家にはなかったゆえ、今日から勝手に名乗らせてもらう。この日の誓いを忘れぬように――」
大樹村のシンボルである、大木を見上げながら、彼は叫んだ。
「木下藤吉郎! それがわしの新しい名前じゃ!」
…………木下藤吉郎……。
俺はその名を聞いて、一瞬、呆然とした。
木下藤吉郎は間違いなく、豊臣秀吉の初名だ。
まさか木下の苗字の由来は、大樹村だとでもいうのか?
だったら俺の転生は、歴史に影響を与えたのか?
それともまさか、俺の転生さえも歴史の筋の中だったというのか?
……分からない。
――ただ、ひとつだけ。確実に言えることがある。
天下に泰平をもたらすために、俺たちふたりは成り上がる。
その気持ちは、間違いなく本物ということだ。
「共に出世しよう。わしは武士、汝は商人。道は違えど、共に王道を歩もうぞ!!」
「はい!」
やってやるぞ。俺の命の続く限り!
はるか東の空から太陽が昇る。
黄金のような日輪の輝きが、たまらなくまばゆかった。
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