第二十三話 蜂楽屋カンナ

1/7
4650人が本棚に入れています
本棚に追加
/1317ページ

第二十三話 蜂楽屋カンナ

「君は、その。……どうしてこんなところにいるんだ?」  俺としては、なるべく優しく声をかけたつもりだった。  だが彼女は。  そう、金髪の少女は、小刻みに震えながら、思い切り俺を睨んできたのだ。 「あ、あなた、なんであたしを助けたの!? あたしをどうする気なの!?」 「どうって。……どうもしないよ」 「嘘だ! 見世物にする気!? それとも奴隷として売り飛ばす気!?」 「だからそんなこと、しないって」  と、言ってから思った。  この子、見世物や奴隷にされかけたことがあるのか?  確かにこの時期の日本は、悲しいことだが人身売買がけっこう盛んなのだ。  戦のたびに、勝った側が負けた側の女性や子供を誘拐して、そして奴隷としてこき使ったり、あるいは売り飛ばしたり、そういうことをするやつらがゴロゴロいるのだ。武士ですら、それをやるんだ。当然、シガル衆のような野盗集団も行う……。  恐らく彼女もこれまで、危機を何度も経験したに違いない。  だから、俺を警戒しているんだ。……かわいそうに。  俺はさらに、落ち着いた声でゆっくりと言った。     
/1317ページ

最初のコメントを投稿しよう!