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第二話 戦国転生
ドンッ!
「うわっ!?」
背中に強烈な痛みを感じて、俺は思わず声をあげた。
背後から殴られた?
いや、違う。目の前に青い空がある。草と土の匂いがする。
俺、仰向けになって寝転がってる……。
さっきの痛みも、背中から地べたに向けてぶっ倒れたことによるものらしい。
俺、貧血でも起こしたのか……?
「あれ?」
妙なことに気がついた。身体がいやに小さい。
なんだ、これ。なんか、おかしいぞ。
そもそも俺は雷に打たれたような……?
「ヤゴロウ、大丈夫か?」
突然、声をかけられた。
顔を向けると、少女がいた。
12歳くらいの、つぶらな瞳をした美少女だ。
倒れている俺を、心配そうに覗きこんでいる。
白い肌に整った目鼻立ち。白桃色の小さなくちびる。さらによくよく見ると、双眸は少しばかり吊り上がって、どこか猫を思わせる佇まい。全身の体躯は細身そのもので、長い黒髪を、うなじのあたりで束ねているその髪型が、スレンダーな肉体に、なんだかよく似合っていた。
「すまない、やりすぎた。相撲を始めると、手加減なしにやってしまうのが私の悪いくせだ」
――伊与(いよ)。
突然、俺の脳裏に彼女の名前が浮かんだ。
それだけじゃない。記憶が次々と復活していく。
――いまは天文20(1551)年11月。ここは尾張国の東の外れにある山村、大樹村。俺はこの村の子供、弥五郎。満年齢で12歳。目の前にいるのは同い年の幼馴染、伊与。小さいころ、病気で両親を亡くしたため、お隣さんだった俺の家に引き取られて一緒に育っている。
――伊与は女の子だけど相撲が好きで、しかも強い。俺は別に相撲好きじゃないけど、伊与に付き合って遊んだんだ。だけど思い切り投げ飛ばされて、たったいま、背中を激しく打ちつけて……そうだ、俺は弥五郎だ。でもちょっと待て。俺は山田俊明で、叔父さんの家を整理していて……?
山田俊明として生きた、29年の人生を思い出す。
あの人生は夢だったのか? いや、そんなはずはない。
ってことは、もしかして……。
俺は、転生してしまったのか!?
それも戦国時代の世界に――
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