第二十五話 尾州錯乱(と、その余波)

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第二十五話 尾州錯乱(と、その余波)

 あたりはいよいよ薄暗い。  夕方の津島の町。  その外れにて。 「ウイッ、ウイッ、ウイッ! ウイッ、ウイッ、ウイーッ!」  俺と同様、戦国時代に転生したフランス人――  ではなく、ただの酔っ払いである滝川一益が目の前にいる。  赤ら顔で、酒臭い息をあたりにまき散らしながら。  かと思うと。  ――くわっ! 「「ッ!?」」  滝川一益は、俺とカンナを睨みつけてきた!  な、なんだなんだ。思わず身構える俺たち―― 「おげえええええげろげろげろげろげろ」 「うわっ!」 「ちょっ……!」  滝川一益は突然、その場でゲロり始めた。  ……なにかと思えば、吐きたくなっただけか。  び、びっくりした。  いや、目の前で吐かれまくるのもそれはそれで驚いてるけど。 「あ、あの……」  あかりちゃん、と呼ばれていた子がやってきた。 「もしかして、『もちづきや』にいらっしゃったお客様ですか?」 「あ、うん。……そうだけど」 「やっぱりそうでしたか! いらっしゃいませ。『もちづきや』へようこ「げろげろげろげろげろ!!」  あかりちゃんの歓迎のあいさつは、滝川一益のリバースによってかき消えた。 「……なんていうか、すみません」     
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