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第四話 家族団欒
「どうした、弥五郎」
「……いま、変な声がしなかったか?」
「いいや? ……大丈夫か、弥五郎。本当に頭を打ったのではないか?」
「い、いや、怪我は本当に平気だよ! ごめん、変なことを言って!」
「そうか。それならいいが。……さあ、本当に帰るぞ。義母様からどやされないうちにな」
「あ、ああ」
声のことは気になる。
だが、いまはどうしようもなさそうだ。
……とにかく家に帰ろう。
帰りが遅くなると、伊与の言う通り、母ちゃんに叱られるからな。
が、手遅れだった。
「こんな時間までふたりとも、家の手伝いもせず、どこをほっつき歩いてたのっ!!」
家に帰った瞬間、母親のお杉から、カミナリが落ちてきたのである。
「やることなんて山ほどあるのに、まったくなにをしてたんだい。……なに、相撲? そんなことをする暇があるなら薪割りのひとつでも手伝いなさい!!」
「お杉、もういいじゃないか」
隣で、怒鳴る母親を止めに入ったのは俺の父だ。
名前は牛松。
「弥五郎も伊与も子供なんだ。そりゃ相撲くらい取るさ、なあ?」
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