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第八話 強くありさえすれば
「叔父さん、まさか生きていたなんて――」
【俊明、違うんだ。おれは山田剣次じゃない】
「え……!?」
【おれは剣次がこの世に残した思い。残留思念とでもいうべきかな。それが、このおれなんだ。剣次は、この世に強い思いを残して死んでいった。その思いがおれという形になったんだ】
「お、思い……って……」
俺はしばし呆然とし、数秒間が経ってから、戸惑いつつも口を開いた。
「じ、じゃあ叔父さんは、この世にどんな思いを残したんだよ?」
【その思いとは…………恨みだ】
恨み――その穏やかではない単語の登場に、俺は思わず息を呑んだ。
【お前も気付いていたようだが、剣次は世の中に対して、恨みつらみを抱いていた。なぜなら若いころから、彼はろくな目に遭っていなかったからだ。常に弱者の立ち位置であり続けたんだ】
常に?
会社でいじめられた、っていうのは知っていたけど。
他にもなにかあったのか?
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