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第十一話 お前は誰だ?
「薪10かあ、それなら20文ってところだぁね!」
商人に薪を見せたら、そんな言葉が返ってきた。
その金額じゃ話にならない。
俺は断り、商人の前から立ち去った。
「やはり、相場通りに売ったら儲けはないな。どうする、弥五郎?」
「さあ……どうしたもんだろう……」
俺と伊与はグチグチ言いつつ、加納の町をうろつき回る。
町の外れまで来ても、人の気配はまるで絶えない。
ゴザの上に扇子を並べて売る人もいれば、路上で布に色を塗っている人もいる。
またある人は土壁に、生乾きの布のようなものを貼り付けていた。
なんだと思ってよく見てみると、それは布ではなくて、紙だった。
「紙を乾燥させているんだな。面白いなぁ、加納市」
実際に見る戦国時代の楽市。
未来人の俺にはとって、その景色はとても新鮮だった。
「あっちは呉服屋で、向こうは……干物を売ってるのかな? お、あそこには餅もあるぞ!」
出店の前で、ぺったんぺったん。
美味しそうなお餅がつかれている。
店では、つきたてのお餅と餅米が、揃って売られていた。
餅米は枡一杯につき20文、餅はひとつ3文、あんこ餅は6文だった。
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