4660人が本棚に入れています
本棚に追加
/1320ページ
第十六話 取引成立
「弥五郎、いいのか? あんな約束をして」
伊与が言った。
母ちゃんも、眉をひそめた。
「そうだよ、弥五郎。炭500分の効果なんてどうするの。炭をじっさいに買い集めるの?」
「それは無理だよ。いま、俺たちの手元には3貫しかない。それも最終的には村のみんなで分ける金だ。それで炭500なんて、とてもとても」
「じゃあ、どうするの?」
「うん。……じつは俺にひとつ、考えがあるんだ。みんな、協力してくれないかな?」
俺は、父ちゃん、母ちゃん、伊与の3人に目を向けた。
3日後。
村の片隅にて――
「こ、これは……」
やってきた藤吉郎さんは、怪訝そうな顔を見せた。
なぜならそこにあったのは、ただ薄く積み上げられた古瓦、数十枚だったからだ。
炭は、瓦のそばに少し置いてあるだけだ。
「おい、弥五郎! こりゃなんじゃ!? ただの瓦でねえか!!」
藤吉郎さんは、困惑と怒りを混ぜたような表情を見せる。
「それもやけに古いボロ瓦……。炭はどうした、炭は!?」
「藤吉郎さん。炭は、この瓦の中に入れるのです。入れることで、炭の火力は何倍にも増します」
「なに? どういうことじゃ?」
「これを、瓦ストーブといいます」
最初のコメントを投稿しよう!