第十六話 取引成立

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第十六話 取引成立

「弥五郎、いいのか? あんな約束をして」  伊与が言った。  母ちゃんも、眉をひそめた。 「そうだよ、弥五郎。炭500分の効果なんてどうするの。炭をじっさいに買い集めるの?」 「それは無理だよ。いま、俺たちの手元には3貫しかない。それも最終的には村のみんなで分ける金だ。それで炭500なんて、とてもとても」 「じゃあ、どうするの?」 「うん。……じつは俺にひとつ、考えがあるんだ。みんな、協力してくれないかな?」  俺は、父ちゃん、母ちゃん、伊与の3人に目を向けた。  3日後。  村の片隅にて―― 「こ、これは……」  やってきた藤吉郎さんは、怪訝そうな顔を見せた。  なぜならそこにあったのは、ただ薄く積み上げられた古瓦、数十枚だったからだ。  炭は、瓦のそばに少し置いてあるだけだ。 「おい、弥五郎! こりゃなんじゃ!? ただの瓦でねえか!!」  藤吉郎さんは、困惑と怒りを混ぜたような表情を見せる。 「それもやけに古いボロ瓦……。炭はどうした、炭は!?」 「藤吉郎さん。炭は、この瓦の中に入れるのです。入れることで、炭の火力は何倍にも増します」 「なに? どういうことじゃ?」 「これを、瓦ストーブといいます」     
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