第十七話 那古野城へ

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第十七話 那古野城へ

「ところで弥五郎。炭100はもうお城に持って帰っていけるかの?」 「あ、はい。あの高台の上に小屋があるでしょう。あそこに炭100束、集めています。父ちゃんたちがあそこで待っているはずです」 「そうか、親父殿が……。うむ、ありがとう。では早速じゃが、炭の代金を支払おうかの。奉行様から預かっておったのじゃ」  そう言うと藤吉郎さんは、ふところから袋を取り出した。  そして、その袋を開く。  中には、銭が入っていた。  永楽通宝だ。  15世紀前半に、明(中国)の皇帝、永楽帝が鋳造したことから名付けられた銅銭である。  永楽通宝は、戦国日本における通貨といっていい。室町幕府は貨幣の鋳造や貨幣制度に着手しなかったため、中国から輸入されてきた永楽通宝を、ひとびとは利用した。  これに対して、日本国内でも勝手に作られた通貨、いわゆる私鋳銭も存在したが、永楽通宝よりは価値が低かった。少しあとの話になるが、慶長13(1608)年には、江戸幕府が私鋳銭4枚で永楽銭1枚と同価値と制定したくらいだ。  ――ともあれ俺は藤吉郎さんから、村中から集めた炭100の代金、2貫300文を受け取った。     
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