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第二十話 黄金色の誓い
俺と藤吉郎さんは、村人の墓を立てはじめた。
穴を掘り、遺体を埋め、その上に石を載せただけの簡易なものだ。
それくらいしかできなかった。
……ややあって、藤吉郎さんは、
「弱いってなあ、嫌なもんだよなあ」
墓作りを手伝いながら、ほとんど独りごちるようにそう言った。
「わしもよ、この面構えと小さな身体じゃろうが。さんざん人からいじめられてきた。小さいころから、殴られ蹴られ罵倒され。挙句の果てには、母親の再婚相手にまで、朝から晩まで張り倒されて……」
藤吉郎さんは、かぶりを振った。
「まあ、その程度はどうでもいい、可愛い話じゃ。家に居場所がなくなって、飛び出したわしはのう、美濃やら三河やら駿河やら、あっちこっちの国を歩いて回ったが――どこでも同じじゃった」
「…………」
「弱いということはもはや、この世の中では罪らしい」
「…………」
「何度、人から虐げられたか。何度、弱者への殺戮を目の当たりにしたことか。……何回も思ったよ。……いまもまた、思ったよ。わしに力があれば。強くありさえすれば。……せめてわしが侍大将ならば、村をこんな風には決してせんのに」
「俺も、そう思います。強くありさえすれば」
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