第5話▲仲間と涙(後編)

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私の名はサブちゃん。 電波銀河から来た、地球外生命体です。 人類が我々の存在を知ったのは、今から約120年程前ですが、それよりもずっと以前から、我々はこの宇宙に存在していました。 そう、ずっと以前から存在はしていたのです。 ですが、流され飛び回るだけの我々は、自分が何者で何の為にこの宇宙に存在するのかなど、考えた事もありませんでした。 人間の様に、仲間を作り共に戦い共に生き、時には泣き時には笑い、生と言うその時間を1秒たりとも無駄にしないそんな生き方など、海の底に白鳥…いや、西から日が昇る…あり得ないと言う意味の表現を、いくら並べても足りない程の事でした。 そして、今私は思います。 これまでの我々は、とても虚しく徒爾な存在であったと。 知らなければ、それはそれでその徒爾な時間を、ただ流れるだけの時間を、これまで通り見送っていたに違いありません。 けれど、我々は知ってしまいました。 人間と言う神々しい生物を。 短命ではあるが、感情という目に見えない力に左右されながら、独特のルールの中で小さな命を輝かせようと、もがきながら生活を営み続けている人間を。 星の約7割が水であるこの地球で活動すると言う事は、水に弱い私達にとって、武器も持たず素っ裸で戦地へ出向き戦い続けている様なもの。 実際、多くの種族がこの青い空の下に消えて行きました。 そんな環境の中であっても、ここで活動する道を選んだのは、その人間と言う生物を貴重だと感じ、共に活動したいと、我々の存在を作り出す何かがそう感じたに違いないのです。 我々も変わらなければならない、どんな形であれ進化しなければならない。 恐らく当時の我々は、人間を知った事で何かが変わり、そして今に至った…そう思えてなりません。 ですから… お願いです、人類の皆さん。 数億年もの間、何の進化も変化も無かった我々を変えた、素晴らしい人類の皆さん。 どうか間違った進み方はしないで下さい。 人間の誇りを守り続けて下さい。 決して難しい事では無いと思うのです。 人間にしか無い『心』 その『心』に照準を合わせ直せば良いのです。 調べると、『心』は人間を人間らしく振舞わせる事を可能にしている何か…と出てきます。 人間が作った人間の為の辞書に、そう記載されているのです。 それは、いわゆる人間誰もが理解していると言う事…なのですから。
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