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時は、2018年夏。
長い鉄の塊は、熱く眩しい朝日を浴びながら、多くの人命を乗せ町の中心を横切って行く。
その鉄の塊の中に彼女は居た。
年の頃は50代始めといったところだろうか。小さな背丈には似付かわしくない脂肪の付き具合、いわゆるオバちゃん体型を絵に描いたような女性だ。
一言で言うと…丸い…そう、丸いのだ。
あの女性を坂道に寝かせたら、そのまま転がり下るのではないだろうか…コロコロコロコロと…
プッ…ブハハハハッ
いや、こんな妄想をしている場合では無い。
私は、我が種族の為、重要な役目を果たさなければならないのだ。
そして、再びその女性に視線を移したその時だった。
「ちょっとあんた」
朝の通勤ラッシュの車内、眠そうなサラリーマンに囲まれる中で、その女性はある中年男性に大声を張り上げた。
見れば、その中年男性の右手を取り持ち上げている。
「みてりゃーコソコソと…いやらしいったらありゃしない。言い逃れは出来ないよっ!ちゃんと見てたんだからねっ。ちょっとそこのお兄ちゃん2人、あんた達若いんだから、このおっさん次の駅まで押さえてて。あたしは、手が疲れた。」
「あっ…はっはいっ」
女性はそう言い放つと、その中年男性を青年に押し付け、手を持ち上げていた左の肩を回した。
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