第1話▲ヒーロー誕生

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時は、2018年夏。 長い鉄の塊は、熱く眩しい朝日を浴びながら、多くの人命を乗せ町の中心を横切って行く。 その鉄の塊の中に彼女は居た。 年の頃は50代始めといったところだろうか。小さな背丈には似付かわしくない脂肪の付き具合、いわゆるオバちゃん体型を絵に描いたような女性だ。 一言で言うと…丸い…そう、丸いのだ。 あの女性を坂道に寝かせたら、そのまま転がり下るのではないだろうか…コロコロコロコロと… プッ…ブハハハハッ いや、こんな妄想をしている場合では無い。 私は、我が種族の為、重要な役目を果たさなければならないのだ。 そして、再びその女性に視線を移したその時だった。 「ちょっとあんた」 朝の通勤ラッシュの車内、眠そうなサラリーマンに囲まれる中で、その女性はある中年男性に大声を張り上げた。 見れば、その中年男性の右手を取り持ち上げている。 「みてりゃーコソコソと…いやらしいったらありゃしない。言い逃れは出来ないよっ!ちゃんと見てたんだからねっ。ちょっとそこのお兄ちゃん2人、あんた達若いんだから、このおっさん次の駅まで押さえてて。あたしは、手が疲れた。」 「あっ…はっはいっ」 女性はそう言い放つと、その中年男性を青年に押し付け、手を持ち上げていた左の肩を回した。
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