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正子さん中心のたわいのない会話が流れる中、タクシーは県警の玄関前に到着した。
そこで、私がはとても不思議な現象を目の当たりにする。
今までか弱く震えていただった結川が、凛とした顔立ちで背筋を伸ばしたのだ。
罪を償い、その全てを受け入れようと決心した人の姿だった。
心1つで、人はこうも変われるのだろうか…
いや、変われるのだ。
人類の奥深さを感じ、素晴らしいと心から思った瞬間だった。
そして、そんな彼女を見、支えて行きたいとおもっている人が最後のショーを始めた。
「運転手さん、彼女ね…これから罪を償い、その中で真っ直ぐに生きようと決心したの。これから、恐らくテレビで沢山彼女を見ると思うわ。それを聞いて腹立たしく感じる事もあるかもしれない。でも、覚えといて…彼女の今日を。お願いね」
それを聞いた運転手さんは、バックミラー越しにこう言った。
「忘れるもんかい、こんなべっぴんさん。償った後必要なら電話しなっ。駆けつけてちゃんと家まで送ってやるから」
それを聞いた結川は、涙を浮かべながら頭を下げた。
そして、そのままタクシーを降り県警の中へ消えて行った。
その後、思っていた通り…いや、それ以上のパッシングを受ける事となった彼女。
それが償いの1つなのだと発言している記事を見つけた時には、私も正子さんも大喜びした。
そして、例のオバちゃん仮面の手の中で眠りについた澤井誠だが、あの後結川の証言で警察があの家に駆けつけ発見され、今は精神科に入院しているらしいのだ。
正子さんに、その時の事を聞くとこんな答えが返ってきた。
「あぁ、あのおっさん?頭叩きながら、赤ん坊になりなさいって念じただけよ」と。
どんな状態になったかは、皆様にも想像がつくと思います。
恐らく正子さんは、赤ん坊からやり直しなさい…と、言いたかったのでしょう。
そして、この事件のもう1人の罪人を、あなたは覚えてるいるだろうか。
結川を送った後、その罪人を見極めに行ったのだけれど…そこから、思いもよらない状況へと陥ってしまう事となる。
その話は次の機会に。
1話▲ヒーロー誕生 終
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