第2話▲クズの中のクズ

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私の名はサブちゃん、大物演歌歌手では無い。 電波銀河から来た電波系サブリミ波種族の者だ。 いわゆる地球外生命体なのだが、今や地球に溶け込み過ぎて、己を地球内生命体と思っている仲間も多い。 あえて言わせて貰うが、このサブちゃんという名、これは、オバちゃん仮面こと本名愛田正子さん50歳が名付けたもので、私の元々の名では無い。 未だに馴染めないこの名に違和感を感じながらも、私はこの名を楽しそうに呼ぶ正子さんに合わせ、仕方なく返答している。 …と言いたい所なのだが、今は何故か…何故か妙な心地よさを感じているのだ。 これは恐らく、初めて自分の名と言うものを貰いそして、その名を呼んでくれる者がいる暖かさを心地良いと感じているのだと思う。 さて、そんな私とオバちゃん仮面、10年後に襲い来る核戦争を阻止する為、世界を救う戦いの第一歩を踏み出したのである。 そして先日、私達はある事件を解決した。 自分の私利私欲の為に、会社の上司を痴漢犯にしたてあげ、その家族を不幸のどん底に落とした澤井。 不貞行為の画像をネタに澤井に脅され、痴漢被害者を演じた結川。 この2人に裁きを下し、感動的なラストを飾ったのである。 すいません…嘘です…感動的なシーンなど、全くありませんでした。 そしてその事件解決後、のんびり帰宅の途についているオバちゃん仮面に、私はある疑問を投げかけた。 「オバちゃん仮面、あの動画をアップした男は無視されるんですか?」と。 画像をアップした男とは、澤井にお金で雇われた鹿田一雄27歳。 彼は、紛れもなくサイバー犯罪者。そんな男をオバちゃん仮面は野放しにするはず無いと思っていた私は、いつ彼に裁きを下すのか気になって仕方なかったからだ。 それなのに…彼女の答えときたら… 「あ、忘れてたわ」 …… しっ仕方がないのだ…人間50歳を過ぎると、記憶力の低下か始まるのは避けようがない。 そう、いわゆるこれも老化現象の1つなのである。
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