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そして、続ける。
「お嬢さん、あなたも次の駅で一緒に降りるよいいね」
「えっ…でっでも会社が…」
「会社が何だっての?あんた、痴漢されるの初めてじゃないでしょ」
「えっ…」
若い女性は、言葉を無くした。
「だいたいね、あんたもあんたなんだよ。こんな事されて黙ってるから、こんな奴らが調子に乗って次の犯罪を犯すんだ。嫌なら嫌!声を上げなきゃ何も変わらないんだよ」
若い女性は、涙目で女性を見、そして震える声でこう言った。
「…私だって…私だって…嫌で嫌で仕方ないんですっ」
「嫌で仕方ないものを、あんたはずっと我慢するのかい?今日も痴漢されるかもって、怯えながら電車に乗るのかい?それとも、電車に乗らなくて済む会社に転職でもするのかい?何故あんたがそんな思いしなきゃならないんだよ。罪を犯してるのは、こいつらだよ?あんたは、何も悪い事なんてしてないんだから、胸張ってりゃぁいんだよ」
「…私は、そんなに強くない…」
若い女性はそう言うと、その場に座り込んで大声で泣き始めた。
「ふぅ…参ったねぇ」
丸い女性は、困った顔でそう言うと、視線を痴漢男に移しキリッとした顔で言った。
「あんた達痴漢が道楽でしてる行為で、若い女性がとてつもなく怖い思いをしてるんだ。その報い受けてもらうよっ」
その言葉が合図だったかの様に、駅に到着した電車の扉が開く。
「お兄ちゃん達、学生さんかい?もう少しだけ付き合って貰えるかい?」
「はいっ!喜んでっ!」
「ありがとうね。さっ、行くよっ」
そう言って、痴漢のおっさんと青年達と半べそ女性を引き連れ、丸い女性は颯爽と電車を降りて行った。
人間と言う種族と共に過ごす様になって早222年。今年は、記念すべきゾロ目の年だが、そんな事はどうでも良い。
それ以上に、探し求めていた人材を見付ける事が出来た事に心が踊った。
「見付けた…」
私は、そのままその丸い女性の後を追った。
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