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家に到着した彼女は、早速買ってきた衣料を紙袋から出し、再確認し始めた。
しめしめだ。
彼女が店を出る前に、″あれ″を紙袋の中に忍ばせてあったのだが、いよいよ彼女が手に取り試すチャンスがやって来たのだ。
一枚ずつ袋から出し、ハサミでタグを切り取る彼女。タグを切った後、綺麗にたたみ重ねて行く。意外と几帳面だ。
そして、とうとう″あれ″の番。
それを手に取った彼女は、「えっ?」と言いながら首を傾げる。当たり前の行動だ、自ら購入した物では無いのだから。
どんな行動をとろうと、彼女が″あれ″を手に取ってくれたらこっちのもんだ。
私は、すかさず声を掛けた。
「愛田正子さんですね?」
「グヘッ!」
いったい何処から出た声なんだ…
驚いた彼女は、手に持ったそれを投げ捨てた。
いやいや、困るよ正子さん。身体に触れていないと私の声は聞こえないんですよ。さあ、早くそれを手に取って…さあ…さあ
私の願いが通じたのか、恐る恐る床に落ちたそれを拾い上げる正子さん。
そして、再び私は声を掛けた。
「それを離さないで下さい!離すと私の声が聞こえませんから」
「えっ!あんた誰よ。何処に居るのよ」
こんな突拍子の無い場面でも、冷静に対応する正子さんに、私は心から感謝した。
「ご理解感謝します。私は、サブミリ波種族の者です。何処に居るかと言われますと…空気中に存在しているとしか言いようが無いのですが…」
「空気中?この家の中の?」
「はい、そうです。人間の目では確認出来ない存在なのです」
「で?そのサブ何とかって種族が、私に何の用があるのかしら?用があるから、話しかけて来てるんでしょ?」
「さすが御察しが良い。では、単刀直入に申し上げます。正子さん、あなたに地球を救って頂きたいのです」
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