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そんな眠らない街の違う店。この店もまたむせ返る様な空気の店。和洋中何でもある盛りの良いレストラン。
「はぁぁぁ...もう しあわせぇ~」
ここにも仕事を終えた体を満たすために欲望に身を委ねた女が1人。
彼女の目の前にあるのは
ライス&パスタ&パンの炭水化物三銃士 いずれも特盛!
カラッと揚げたての唐揚げ
鉄板の上でソースがかけられ じゅうぅと聞くだけでお腹の空く音を奏でている どでかいハンバーグに分厚いステーキ
Lサイズのピザが5枚
付け合せにしては多すぎるフライドポテト
色とりどりの野菜が入った山盛りサラダ
ラーメンと勘違いしているのかどんぶりにはコンソメスープが なみなみと注がれ湯気を立てている。
止めにドリンクには大ジョッキにコーラ おまけに3色のアイスがプカプカと浮かんでいる。
こんなフードファイターも遠慮しそうな高カロリー&脂肪と糖分のオンパレードの様な食事。
それを彼女は一人で食べ尽くそうというのだ。
「いただきま~す!」
行儀よく食べ物に感謝を捧げてから彼女は、この栄養バランスという概念をめちゃくちゃにレイプする様なカロリーを片っ端から大きな口に頬張る彼女。
「おいひぃ~!!」
彼女の見事な食べっぷりに店員も隣接する席の客も目を見張る。
その量もさることながら 彼女の幸せそうに食べてる顔が実に良い。
彼女を腹が減っていた。仕事の後はいつもそうだ。腹が減る。口の端からは涎が垂れ 脳味噌はカロリーを摂取する事しか考えられず ひと口食べ物を口に運べば先程までの仕事の疲れは既に忘却の彼方に押しやられ 空腹など津波に呑まれる笹舟の様に姿を消すだろう。
そんな彼女を慰める事が出来るのは好みの店のデカ盛り。仕事の後は腹一杯食べる。それが彼女の飽くなき欲望だった。
その欲望に身を委ねた彼女は次々に大盛りの皿を空にしていく。
「ごちそうさまでした!!」
あっさり完食した彼女の恍惚とした表情と食いっぷりに他の客から自然に拍手が起きる。
「じゃ~締めに...すいませーん!ケーキ各種とチョコパフェとパンケーキと白玉ぜんざいくださ~い」
今度はスイーツに手を出す彼女。見てるだけで胸焼けがしそうだ。
甘味をこれまた美味そうに食べる彼女。その足元の影も一口頬張る度に大きく黒く澱んでいたのは誰も気付いていない。
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