喪服のエージェント

2/9
10人が本棚に入れています
本棚に追加
/59ページ
眠らない街は昼間は輪をかけて賑やかだ。大小様々なビルが天に向かって伸び空を狭くしている。 そのビルの谷間の道路には夥しい数の人々が虫けらの様に蠢いている。 これからデートだろうか めかしこんだ女の子が楽しげに待ち合わせ場所に向かっていけば、その向こうからは顔面蒼白やつれたサラリーマン。 自分の生活のための仕事が気づけば会社と仕事の為に自分が存在する様になってしまったのだろう 精気の無い声で電話の向こうの顔も知らぬクライアントに平謝りをしている。 その後にはただ歳を食っているだけで自分は偉いと勘違いした年寄りグループ。猿の群れの様な若者グループ 老若男女様々な人生が交差していた。 その群衆にあって珠姫は異様な存在感を放っていた。それは彼女がずば抜けた美女だからと言う事のみでは無い。 彼女の放つ オーラ 雰囲気が街ゆく人々のそれとは全く異質の物だからだ。 人の皮を被った未知の生物 キチリと並んだ小さな蟻の行列をヘビが横切っている。圧倒的すぎて蟻達は抵抗する気にもなれない。それほどの存在感を珠姫は放っていた。 混雑した遊歩道だったが道行く人は無意識に珠姫を避けて歩くために 珠姫はすんなりと目的地に進む。 徐々に人通りが減っていき代わりに浮浪者 反社会的勢力 アウトサイダーが増えてきた。 表通りのビル群の日陰に覆われた薄暗い物騒な裏通りに入る珠姫。 そんな不穏な暗黒街の一角にヴィジランテのオフィスはある。この通りの建物の中ではそれなりの大きさだが表通りのビル群から見ればちっぽけな建物だ。 そんな薄汚いオフィスに似合わない美女ともう1人この暗黒街には絶対いないような珍獣が珠姫を待っていた。
/59ページ

最初のコメントを投稿しよう!