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喪服のエージェント
あの熱帯夜が明け 彼女は一夜の情事を務めてくれた娼婦に別れを告げ 颯爽と街を行き事務所に出勤する。
ヴィジランテのユニホームは黒のパンツスーツに黒ネクタイ 所謂喪服だ。それと右腕に不可思議な文字が刻まれた銀の腕輪 この二つは仕事の際に着用が義務付けられている。
辛気臭いユニホームを身に纏っているが 彼女の美しさは少しも陰りがない。
自信に満ち溢れた表情 ナチュラルメイクという名の幾重にも計算された完璧な化粧 全く遠慮のない美しさをひけらかしながら歩く女。
彼女の名は黒鉄(くろがね)珠姫(たまき)
サラサラと腰まである髪は月に照らされた夜空の様な青みがかり 肌はその闇を優しく照らす月の様に白く キリッとした切れ長の目は見る者の心を射抜く。胸は控えめだが その完璧な8頭身には適量な膨らみだ。
「絶世の美女」
彼女を見る世の男共はそれ以外の言葉を思いつくことはないだろう。すれ違う男は皆見とれ その中の勇気ある者は声をかける。
すると彼女はこの上ない不快感で顔をしかめ 決まってこう言う。
「くせー息吐くな糞袋!視界に入るな!殺すぞ!」
このセリフを聞かされて食い下がる男は一人としていなかった。その代わり何か別の扉を開けた男はごまんといる。
男に対してその鋭過ぎる視線と敵意と嫌悪感特盛のセリフを吐く美女。それがヴィジランテ A級エージェント 「アクマツキ」狩りのエキスパート黒鉄 珠姫だ。
大嫌いな人間の雄をひと睨みで蹴散らし 仕事のパートナーを待つオフィスに足早に向かう。
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