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気がついたとき、ボクは毛布にくるまってベッドに横になっていました。滅多にベッドで眠ることがなかったので、その柔らかな感触が心地よく、状況を知るために起きあがろうか、気にせず寝てしまおうか迷いました。
「気がついた?」
ふいに声をかけられて、一気にボクは覚醒しました。まぎれもなく、ボクが探していたあの女性の声でした。飛び起きようとして目に入ったのは、ブラウスと若草色のカラージンズを身につけた彼女が片足をベッドに乗せ、覆い被さるようにこちらをのぞき込んでいる姿でした。ボクは驚きのあまり目を見開いて固まってしまいました。彼女の瞳は髪の毛と同じブラウンで、その周りを細く長いまつげが縁取っているのが印象的でした。ボクがたじろいでいると彼女は身を引いて、笑いながら言います。
「扉を開けたら、いつぞやベンチで会った子がいるんだもの。驚いちゃった。話しかけても全然反応ないし、死んでるのかと思って、今ある舟の在庫を確認しそうになったわ」
怖い冗談だ、とボクは思いました。
「喉渇いてるでしょ。水持ってくるわね。あ、それより温めたミルクの方がいいかしら」
どちらでも、と小さく言って、ボクはもう一度毛布にくるまりました。
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