プロローグ

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プロローグ

 あの男が口にした場所、日時、そのままだった。  半信半疑だったが、念のため来てみて良かった。  もうすぐ七月になろうとしている今日は、梅雨明け前でも雨は降っておらず、日差しはかなり強かった。  緩やかな坂でゆっくりと車を降りてから、改めて前方を眺めてみる。  目の前に広がる光景に、これまで感じたことのないほど気分が昂ぶっていくのが分かる。  興奮で、全身の血液が力強く脈打っているようだ。  数メートル先にあるのは大破して若干斜めになった一台のセダン、白いボディの外国メーカー高級車だ。  他に車や歩行者はなく、完全なる自損事故だ。  衝突した先のガードレールはひしゃげ、標識は折れて車体に突き刺さっていた。  燃料漏れを起こしているようで、ガソリンの臭いが鼻を刺激した。  傾斜のおかげで、アスファルトにできたシミは徐々に車の前方へと伸びていく。  それを踏まないように気を付けながら、はやる気持ちを抑えるように一歩一歩踏みしめて、車へと近づいた。  運転席まで近づいて一旦足を止めたところで、醜いうめき声が聞こえてくる。  その苦しそうな声に、思わず口元が緩んだ。
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