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「ね、そろそろ危ないよ」
彼女が不安そうな視線で呟いた。
あの男が言っていた通りなら、タバコを落とそうが落とすまいが引火するはずだ。
しばらく待って、それでも引火しなければ直接火を点けるつもりだが、今はひとまず距離を置くことにする。
「では、さようなら。先に逝った仲間も、地獄で待っていますよ」
それだけ伝えて安全な場所、しかし男の顔が見える位置まで距離を取った。
彼女が握ってきた手をしっかり握り返す。
二人で語りたい言葉はたくさんあった。だけど、今はまだ出てこない。
そして、それは突然起こった。
ボッと火の手が上がったかと思うと、一瞬でセダンは炎に包まれた。
「あぁぁッ……熱……熱いぃぃぃッ……誰かぁッ……」
聞くに堪えない、醜悪な悲鳴が周囲にこだました。
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