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よその子どものことなんか、ほっといてくれたらいいのに。気になって買い物もできなかったじゃない。これだから大阪の人はなれなれしくてイヤなんだ。この前だって…と、理沙がとりとめもなく思いをめぐらせていると、ふと美月がひとりで砂場へぽてぽてと走っていくのに気がついた。いつの間にか遊具から降りていたらしい。
空のベビーカーを押しながら走って追いかけると、美月はすでに砂場に到着して、置いてあった赤いスコップに手を伸ばそうとしているところだった。近くで美月と同じくらいの歳の女の子と、それよりも大きい女の子が遊んでいる。その母親らしき女性も側に座っているのが目に入り、理沙はあわてて美月に声をかける。
「美月、ダメよ。よそのおねえちゃんのでしょ」
「あ、どうぞどうぞ。いいですよー」
明るい声が聞こえて、理沙ははっとしてそちらを向いた。母親らしき女性はにこにこと美月に向かって続けた。
「一緒に使おっか。ゆき、遊んでやりー」
「いいよー」
姉の方が返事をすると、
「はい。使っていいで」
と、美月にスコップを渡してくれた。そのまま一緒に遊び始める。
「いいんですか?」
理沙が母親に尋ねると、母親は
「もちろん。それに、よその子がいるとうちもけんかせんでええし」
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