白線を越えたら君の横

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高校の頃からの付き合いだった。仲の良い友達同士で互いにどっちが早く彼女ができるか競いあったりなんかしてくだらないケンカも何度もした。互いに彼女が出来たってケンカをしたって離れるなんて選択肢はなくてむしろ自分があいつの一番じゃなきゃ気に入らなくて気づいた時にはその気持ちは友情の形をしていなかった。自分だけが歪な気持ちを抱えているのは辛かったけれどそれでも一緒に居られないことの方が嫌でどうにか繕って傍にいた。その関係が大きく変わったのはあいつからの告白だった。予想外の出来事に驚いたが嬉しかった。けれど今さら関係を変えるには少々俺たちは大人になり過ぎてしまった。現実は当人たちが幸せならそれでいいという訳にはいかない。どもる俺にあいつは 「俺は諦めないからな。俺が頑固なのお前はよく知ってるだろう」 そう言って不敵に笑うのだ。決して人のせいや俺のせいにしないで自分で背負い込んでいくその姿勢はあまりに眩しかった。 あいつの押しに負けるような形で付き合い始めた俺たちの関係は以前と変わりなかった。ただたまにじゃれる様に体を重ねることが加わっただけだった。そんな緩やかな幸せを過ごしていようが世界は俺たちのことなど知らずに進む。あいつにお見合いの話がきていることを知ったのは偶然だった。しかしそれを聞いた瞬間"あぁ、ついに手放す時が来たんだな"とそう思った。幸せな時間は長くは続かない潮時なのだと。 その日帰るなり俺はあいつに別れを告げた。「お前のことが嫌いになった」なんてくだらない嘘を吐いて。あいつは泣きそうな顔を隠すように背けながらそれを承諾した。最後に一緒の布団で寝ることを条件に。次の日の朝、あいつは変わらぬ顔をしてご飯を作っていた。あまりにも普段と変わらないから昨日のことは夢だったのではと思ったほどだ。しかし帰って来て実感した。綺麗さっぱりなくなったあいつの荷物を見て別れてしまったのだと、終わってしまったのだと。
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