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「ここまででいいの?」 「うん。コンビニ寄りたいし」  家からふたつ離れた交差点で、雅の車から降りる。辺りはすっかり薄闇に沈んでいた。  雅は寝入ってから十分ほどですぐに起きた。うたたねをしていた自分に少し驚いたようではあったけど、あんな寒風のもとで寝ていて風邪をひかないかが心配だった。 「じゃあ俺もちょっと買い物していこうかな」  あくまで静かな駆動音をたてて、車は器用に狭い駐車場に入っていく。このあたりはいわゆる高級住宅街と呼ばれる地域だが、それでもこのあからさまな高級車は目立つ。そういえばまた職業を聞きそびれてしまった。何をしたらこんな車を乗り回してあんなタワーマンションに住めるのだろう。 「ありがとう、送ってくれて」  自分の口からありがとうなどという言葉が自然に出たことに内心ひどく驚いた。そんな俺の動揺に気づいたか気づいていないのか分からないが、雅は柔らかく笑うとエンジンを止めてシートベルトを外した。 「慎也のぶんも買ってあげるよ。何がいい?」 「え、別にいいのに……」 「いいから」     
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