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「おまえは担任として傍にいながら気づかないのか? この子が本当に欲しているものが。俺だったらそれを与えてやれる……おまえにできないことを、俺はやってやれるんだ」  どこかうわ言のように語る雅の顔は恍惚に満ちていて、その目はどこも見てはいなかった。目の前の香坂も、車の中で身を小さくしている俺も。綺麗な顔を歪ませて笑うその様子に、彼の――狂気の根幹を見た気がした。  雅の背がしなり、今度ははっきりと香坂の胴に拳を入れるのが見えた。細い体躯が折り曲がったのを確認すると、素早く運転席に乗り込んで車を走らせる。  サイドミラー越しに、追いすがろうと手を伸ばす香坂が見えた。  雅は車を人気のない地下駐車場に停めると、一旦降りて後部座席に乗り込んできた。そしてそのまま俺に覆いかぶさってくる。制服のベルトに手をかけられて意図を察し、ざ、と血の気が引いた。 「あ、やだっ、こんなところで……」  言葉を最後まで続けることはできなかった。今までのどれよりも強く、鋭い平手で頬を張られていた。雅にとって拒絶の言葉が地雷であることはとうに分かっていたはずなのに。 「やめてよ。拒絶しないで」  制服を脱がせることもなく必要なところだけをはだけさせて、雅は俺を犯した。最初の一撃以外殴られることも、首を絞められることもなかったが、俺の中でどこかが痛い痛いと悲鳴を上げていた。 「うあ、あ、あっ」     
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