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「俺を、ちゃんと見てくれるかと思ったのに」  嗚咽と一緒に吐き出した直後、雅の顔が蒼白に染まったと思ったのは――俺の見た都合のいい幻だったろうか。 「……ごめん」  体内にあった熱が引いていく。ぼたぼたと垂れる粘液が滑稽だった。  雅は俺から目を逸らしたまま、黙っていた。俺も雅をまともに見ることができない。胸を刃物で切り裂かれるようなこんな痛みなんて、知りたくはなかった。
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