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家に帰ってきた根津は、靴を脱ぎ、重いブレザーを脱いだ。
よくよく考えれば、あそこからの距離は近くても、降りたバス停から家までの距離は結構あったのだ。
後先考えずに行動しちゃ、ろくな目に合わないなと思いながらも、人助けをしたためか、後悔する気持ちは微塵も無かった。
とにかく、お風呂に入ろうとペタペタと廊下を歩き、お湯を沸かしにお風呂場に向かう。
この家には、根津以外の人の気配は無い。
それもそのはず、根津は一人暮らしをしているのだ。
自分の夢を叶えるため、両親の元を離れた高校に進学した。
そうして、高校からバスで通える、比較的安い場所で一人暮らしをしていた。
湯船にお湯を溜め始めたとき、インターンが家に鳴り響いた。
こんな時間に誰だろうかと疑問に思いながらも、玄関まで戻り、扉を開ける。
「……」
「あ、さっきの……」
そこに立っていたのは、先ほど傘を渡した青年だった。
どうしてここにいるのかと不思議に思ったが、青年が持っていた傘を見て納得した。
「傘、返しに来てくれたんだ。ありが……」
「なぁ」
ありがとう。と言おうとした言葉は、青年によって遮られた。
傘に向けていた視線を根津よりも少し青年に向ける。
青年はうっすらと顔に笑みを浮かべ、口を開いた。
「オレのこと、飼ってみない?」
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