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突然のことに戸惑いを隠せない根津。
「……ごめん、もう一回言ってくれる?」
「オレのこと、飼ってみない?」
「んん、ちょっと何言ってるのかイミワカンナイデスネ」
聞き間違いかと思ったが、一言一句同じように繰り返され、言われた言葉を理解する。
が、理解は出来ない、いや、したくない。
とにかく混乱している頭の中を落ち着かせようと青年を家にあげることにした。
そうして、机を挟んで向かい合う。
根津は正座をしていたが、青年は胡座を掻いていた。
青年にどういう意味なのかを説明するように促す。
青年はすぐに口を開いた。
「今日の宿がなくて困ってたトコだった。どうしようか途方に暮れてたら、お人好しのアンタが通りかかった。この際、誰でもいいと思ったから着いてきた」
「……」
根津は、青年の説明を聞いて、納得した。
なるほど、彼は家出青年だったのか、と。
何があったのかは知らないが、家族と喧嘩して家を飛び出し、宛もなくブラブラと友人などの家にお邪魔させてもらっていた。
が、何らかの理由により、友人たちの家も泊まることが出来なくなった。
どうしようかと、あそこで途方に暮れていたところに自分が現れ、ちょうどいいと追いかけてきた、と言うことか。
根津は、誰でもいいからと行って着いていくのは危ないのでは、と思った。
たまたま自分だったからよかったものの、もし悪い人だったらどうするつもりだったのか。
根津は安易な行動について叱ろうかと思ったが、青年も焦っていたのだと考え、叱るのを止めた。
そうして、一つため息を漏らす。
「……いいよ、一日だけなら泊まらせてあげる」
根津のその言葉に、青年は笑顔を見せる。
ありがとう、と言った青年の顔を見て、仕方ないな、と苦笑いを溢した。
明日の朝になったら親に連絡させようと、根津は心の中で考えていた。
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