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「はぁ……」
我知らず大きな溜息を零した水無月廉は、目の前のパソコンの画面をまるで親の仇とでもいうように睨み付ける。青白い光を放つそこに映し出されているのは、所謂ゲイの出会い系サイトだった。
掲示板には一夜の出会いを求めるものや、惚気や雑談、そして同じ嗜好を持つ友人を求めるものまで様々なスレッドが立てられている。
廉が、女の子と付き合うことに違和感を感じるのは己がゲイだからではないかと悩み、手っ取り早く情報を得るために選んだ手段がインターネットだった。
ゲイだと自覚しているひとと接することで、自分がどちら側に属するのかがはっきりするのではないか。
そう考えてサイトを開いてみたものの書き込む勇気はなくて。画面とにらめっこをするなかで、ふとパソコンの画面に表示されている時間が優に1時間を経過していたことに気付くと、もうひとつ大きな溜息が零れ落ちた。
くしゃりと額にかかる前髪を掻き上げて、取り敢えず近場にいる相手を探そうとマウスを動かす。カチカチとマウスが立てる音だけが響く深夜の部屋で、不意にその手が止まった。
友人を求めるスレッドの中の一つの書き込みをじっと見つめる。それはありきたりな文章でしかないのに何故か目が惹きつけられて、何かに引き寄せられるように、気づけばキーボードを打ち込んでダイレクトメールの送信ボタンを押していた。
『30代 ケイ 近場で話しをしたり酒を飲んだり出来る方、お願いします』
続けて書かれていたのは同県の隣の市に住んでいるということのみの簡潔なもので、為人がわかる要素はどこにもないのに、会うならこのひとが良いと思う自分が不思議でならない。
『はじめまして。ゲイである確信は持てていないのですが、よろしければお話しさせていただけませんか? 隣の市在住の20代後半のレンと言います』
自分の送信した内容を確認して、ゲイだと言いきれない自分を相手にはしてくれないだろうと苦笑する。もし廉が会って話しをした後で己をゲイではないと結論付けた場合、ゲイであるケイにはリスクしかないのだから。
――きっと返事は来ない。
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