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繁華街から1本逸れた裏通り。
迷いなく進んでいく後ろ姿を、見失わないように追いかける。
真っ直ぐに背筋を伸ばして歩く姿に見惚れていた廉は、不意に止まった背中にぶつかりそうになって、慌てて足を止めた。たたらを踏む廉を振り返ったケイが、噴きだすのを堪えたのに気付いて頬が熱くなる。
「急に止まってごめんね。ここだよ」
笑みを含んだ声が羞恥心を煽る。色が白いと言われる廉の頬は、きっと紅く染まっているだろう。街灯の途切れたところで良かったと思いながら、小さく頷いた。
ケイが、目の前の重厚な木製のドアを開ける。それに続いて落ち着いた雰囲気の店内に足を踏み入れた廉は、出迎える店員に案内されるケイに続いて奥へと進んだ。
個室のひとつに通されて、向かい合わせに腰を落ち着ける。
「とりあえず、ビールでいいかな?」
「はい」
「中ジョッキふたつと、あとはお任せで適当に持ってきてもらえる?」
廉の返答に、メニューを開くことなく、膝をついておしぼりを手渡す店員にケイが手慣れた様子で告げた。
「かしこまりました」
深々と頭を下げた店員が個室を辞していく。
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