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ドアが閉じられてふたりきりになった室内が、廉の緊張を否応なしに高めて、落ち着かない気持ちを静めるように乾いた口唇を舌先で潤した。コートを脱ぐケイに倣ってボタンを外す手が震えているのがわかる。
いつもよりも手際悪くコートを脱いだ廉が、畳んで隣の座布団の上に置く様子を、先にコートを畳み終えていたケイがじっと見ていたことに気付いて頬に熱が籠った。
「そんなに緊張しなくても、とって喰いやしないよ」
テーブルに頬杖をついて長い指先で口元を覆っているけれど、その肩は小刻みに揺れていて笑いを堪えているのがわかる。ケイは存外笑いのツボが浅いようだ。
天井からぶら下がるライトの、オレンジ色の柔らかな光に照らされた顔立ちは、彫像のように整っている。黙っていれば近寄りがたい印象を与えそうなのに、常に笑みを浮かべる柔らかな表情のお陰でとても親しみやすく感じられた。
「そ、そんなことは思ってないですけど……」
「思われてたら困るよ」
やっとのことで口を開いたのに、即座に笑みの含んだ応えが返される。抵抗を感じない程度の親しさで語られる言葉が、廉の緊張をゆっくりと解きほぐしていく。
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