お茶でも一服

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「これは初デートやなぁ」などと浮かれている芳樹に、違うわ! と言ってみるが、ニマニマが止まらへん。辛気くさい義理の兄の顔など、何処かへ飛んでいった。ほんまにお手軽な女やと、自分でも呆れる。 「なんか、美味しゅうないお茶やなぁ、ごめんなぁ」  バイトの女の子がたてた抹茶は、薄いのにダマが残っていた。折角の初デートやのにと謝るよっちゃんに首を横にふる。 「家でお茶でも一服たててあげるわ」と私のたてたお茶の方が美味しいと誘った。  これは春から縁起が良いかも? 頼りないよっちゃんやけど、何より気取らんと付き合える。それはよっちゃんも同じかもしれない。格好つけたりせんでも平気な相手や。  両親と全く気にならなくなったお姉ちゃん夫婦が待っている家に浮き浮きと向かった。 「お茶でも一服!」ふんわりと美味しそうな泡が一面に浮かんだお茶をよっちゃんに飲ませてあげよう。
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