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「見たところなにかないかと物色しているけれど、これと言ってめぼしいモノが無いと言ったところかしら?」
「そんなところです。店員さん、お気遣いなく」
なにか本を押しつけられるのはお断りとばかりに青年はやんわり読子を追い払おうとする。
だが読子が特異な存在だからだろうか。読子は彼に感じた興味がなにかを嗅ぎ取っていた。
「そう言わずに。お暇でしたら、話し相手になってもらえませんか?」
「いや……」
青年は困った表情を見せるが、確かに彼は暇をもてあましていた。故に読子の誘いをなんとなく断れず、彼女に従って座敷に上がる。
「それでは少しだけ」
青年は十分ばかし相手をすればいいかと軽い気持ちで座敷に上がった。
座敷は先程からチラチラと除いていた他の店員の眼が届かないため少し居心地がいい。
「ようこそこの店に。わたしは店主の本屋と言います」
「お…いや、私は……」
「お名前はいいですよ。怪しい商品を売りつけるつもりとかではないですし」
「そうですか。ですが、あなたの目的はいったい?」
「そうね……一目惚れではいけませんか?」
読子の返事に青年は驚く。
急に告白めいたことを言われてじっくりと目の前の人を見ると、なんとなく甘いにおいがしてときめいたからだ。
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