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この時点で彼の体には少し変化が起きていたのだろう。のちに鼻がきく存在になる彼は読子が発する雌のにおいを動物的に感じていた。
好きとか嫌いとかを考える段階では無いが、妙に雄として彼女に反応してしまう。
彼も学生時代に振られて以来の独り身で、素人の肌は久しい。
「なんて、冗談ですよ」
「ほっ」
きょとんとした彼の顔を見てすぐに冗談と返した読子の態度に青年は胸をなでおろした。
本当に一目惚れで告白されていたのなら俺はどうするべきだったのか。それが彼の懸念材料だった。
「ですが、興味がるのは確かです。アナタ、最近体に異変とか起きていませんか? 握力が急に増したとか、目がよくなったとか」
「特には何も」
「そうですか」
読子は青年からある気配を感じていた。
言葉にうまく表せないが、魔女になったからこそわかる同種の匂い。自分と同じ普通とは違う人間が持つ一種のフェロモンを。
だからこそ読子は彼に興味を持った。もしかしたら魔女などという存在になった自分と釣り合う化け物なのかと淡い期待をもって。
「あとは……恋人とかはいますか? 一目惚れというのは冗談でも、アナタが相手なら……」
どうやらハズレの様子だが、逞しい男性と部屋に二人きりというのは考えてみれば捗る。
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