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ep 1 腰抜けと勇気の魔法使い
森を歩きつつも考える。
何故に私は斯様な辺境なぞを歩いているのかと。
望んだ訳ではないが、逃げ出したくなるような事があったために此処にいる。
要は臆病だからこそ逃げ出してきた。
情けない話だが、常に上にいる幼馴染と比較されるのが嫌になってきているのだ。
幼馴染である彼女が悪い訳ではない。
寧ろ、彼女こそが私の味方であったのかもしれないと言えるぐらいに親身になってくれていた。
しかし、それぐらいに親しいから……
幼馴染であり、新進気鋭の賢者と無為無能の魔法使いでは比較されても止む無しというべきなのか。
魔道具の作成、四つの属性を多重詠唱……
魔法なら比類なき天才と呼ぶに相応しい偉業を行える程に私の幼馴染は周囲からも素晴らしい存在であったのだ。
一方で無為無能の魔法使いこと私はどうなのか?
魔法使いなら誰しも得意、酷くても属性を一つは扱える。
無能と呼ばれる所以は使える魔法がどの属性にも属さず、使い道が魔法使いにあるまじき生き方しか出来ないからだ。
勇気の魔法、私の魔法はそう呼ばれている。
最初こそはどの属性ともとれない魔法に様々な者が興味を抱いたが、効果に失望して去っていくのが常だった。
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