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「……残念ながら私もクエスト失敗だ。
次の相手に頑張って勇気を頂きたまえ」
「……でも、期限はもうないんですよね?」
ぐっ、腰抜けの割には鋭いところを。
クエストがどうしようもないと判断した時の常套句で逃げようとしたのをこうもあっさり看過するとは。
しかし、もう一野宿する準備しようものなら帰りの道中に多大な支障が出るのは明々白々であるし、そこまでしてやる義理などない。
言ってしまえば、受けるも断るも私次第という訳だ。
そう思いつつ、チラリと腰抜けを一瞥すると縋るような丸い瞳を潤ませながらも此方を凝視している有様で断るに断りづらい。
が、背に腹は代えられないように銭払えないなら買えないのだ。
「払うものがなければ、此方も困る。
ただでさえ、往路に金を使っているのは君も分かるだろう」
「おーろ……?」
「その件はもういい、因みに行くために来た道の事だ。
資金調達も宿もないのなら、大人しく帰らさせて貰う」
切り株から立ち上がり、彼女から背を向けて歩き出す。
少し心苦しい感じもするのが、 "魔法使いたるもの、割に合った仕事をせよ" だ。
遠路遥々というが、単純に鈍った体を動かしただけのような気もするが。
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