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それを忘れるぐらいに私は慌てて出て来てしまったのかと、内心で苦笑と外面は大きな溜息を吐く陰気な風貌になっている。
懐に入れたクエストの依頼書を取り出し、まじまじと見つめる。
"勇気をください"
あまりの短文かつ不明確な内容にクエストを発注側も困惑しており、出さないのも発注側の何でも屋という側面を疑われるので仕方無しにやっているのだろう。
それも私には好都合であり、この件に関しては正に適材適所といえる。
「で、こんなところ……か」
辺境の辺境。
樵の村、そう呼ばれる樵たちの集まりの小さく地図にも載せられたり、載せられなかったりするかのような村。
ここに私の魔法を求める人物がいる。
私の魔法で本当に大丈夫だろうかという不安はない訳ではない。
残念ながら、この魔法は私が居続けて初めて効果を持続させる事が可能な魔法であるために魔法頼りになられても困るのだ。
「此処、か」
樵の村の中でも一際小さな家であり、住んでいる者は独りで暮らしているのだろう。
……私も似たようなものか。
幼馴染は親しい家族にも当たる人物であるが、苦悩を理解してくれる者ではない。
そういう意味だけを取るなら私は此処の住人と同様に独りなのだろう。
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