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扉をノックし、来客である事を知らせるも中から誰も出てこない。
というよりも誰かが何かにいる気配すらないのだが、依頼が昔過ぎて引っ越されてしまったのではないだろうかと勘繰ってしまう。
「お前さん、シャルちゃんに用があるんかい?」
背後から老婆に声をかけられ、その通りだと頷くと顎を外に向けられてしまう。
まさか、帰れとでも言われるのか?
「あの子なら今は仕事中だから村の外だよ。
早いとこ用事を済ませたいっていうんなら、あたしらの仕事場に行ってみるといいよ」
そういう事だったか……
老婆の親切心に軽く会釈をしてから村の外を見つめる。
面倒な事になったなと少し思う。
引越してくれていれば、今から発注所にでも期限切れとでも報告に帰っていただろう。
いるとなれば、受注側の信用問題に繋がるのは火を見るよりも明らかなので仕方なく言われた仕事場に向かう。
この村の仕事場は樵の村であるように木を切る音がそこら中から聞こえてくる。
しかし、どれもこれも同じ音に聞こえる。
止む無く屈強そうな一人の樵の男を掴まえ、先程の老婆が言っていた名前を出してみる。
「少しよろしいでしょうか。
此方の村にいるシャルという者のクエストを受けて来たのだが、何処にいるか知らないだろうか?」
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