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「ちびシャルの事か?
ふふーん、そうかそうか……」
男はニヤリと笑うと息を大きく吸い込み……
「ちびシャルゥッ!! お客だぞコラァッ!!」
森に向かって此方の耳が痛くなるような声を張り上げるとそちらの方向から "ピギャッ!?" とおかしな鳴き声が返ってくる。
「今の鳴き声が聞こえた方にいるぜ」
男はニヤニヤしながらも行ってこいと顎で指してくれるので鳴き声の主の所へと歩いていく。
少し歩くと木漏れ日を反射している鈍色の斧と……
「あ、あのぅ……」
長い長い銀の髪の少女が座り込み、怯えた様子で私を見つめているのだった。
「わ、私のお客様とは貴方……なのですか?」
「そうだが……?」
少女は手元の斧を杖に立ち上がろうとするも脚が震えており、さながら生まれたての子鹿のようだ。
彼女の健闘も虚しく、結局は立ち上がれずにまたも腰を落としてしまう。
「体でも悪いのか?」
「あ、あの……
何処も悪くないのですが、こ……腰がですね」
彼女は顔を真っ赤に染めると涙目になり始める。
「先程呼ばれた時に抜けちゃったんですぅ……」
語尾が小さくなっていくので聞こえづらかったものの、間違いなく私は呆れ顔になっているのだろう。
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