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私のポケットでスマホが振動を始める。
咄嗟に頭に浮かんだのは市倉さんからの着信ではないかという思いだった。
しかし私の表情に敏感な恭ちゃんに聞かれる。
「ん？ 佳奈、どうした？」
「えっ？」
「何か用事でも思い出したみたいな顔してるけど」
「そ……、そうだ、今井部長に報告忘れてたからちょっと電話……」
そう言いながら店を出ようとした途端、ポケットで振動していた携帯がピタリと止まった。
「…………」
思わず自分の足まで止めてしまったことで、更に恭ちゃんに不審に思われたのかもしれない。
「佳奈」
「は、はい」
ビクリと肩を揺らしながら返事をして、恐る恐る振り返る。
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