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「何なのよ、いったい」
電話の相手が市倉さんではなかったことに、また落ち込んでため息を吐く。
あんな大企業のシステムエンジニアなのだから、残業も当然だろうし昨日はたまたま通りかかって私を助けてくれただけで、彼は本当は必要以上に絡みたくはないのかもしれない。
実際、あのアパートの住人は挨拶をしても返事すらしてくれない人もいるし、お隣の101号室の人だって1年も住んでいるのに顔を合わせたのは数えるほどしかない。
私がした行動は、もしかしたら市倉さんにとっては迷惑だったのではないだろうか。
「……はぁっ」
小さくため息を吐いてから私はまた店に戻る。
しかし店に入ると同時に、千波の驚く声が響いた。
「えぇぇ?! じゃあ大吾さんってあの頃、暴走族の総長だったの?!」
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