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ようやくアパートの駐車場につき、恭ちゃんの車の前で立ち止まる。
「じゃあ佳奈、おやすみ」
「うん、おやすみ」
「あ、それと」
「うん?」
そう問いかけた瞬間、私の腕を掴んだ恭ちゃんは自分の胸の中に私を引き寄せ包み込んだ。
いきなりの恭ちゃんの行動に驚いて固まっていると、どこか切ない恭ちゃんの声が落ちて来る。
「もう変な男に捕まるんじゃないぞ」
「…………」
言葉を失った私の頭上で、恭ちゃんはふっと小さく笑うとすぐに自分から引き離し、指先で額を弾いた。
「ホントに佳奈は、男を見る目がなさすぎ」
「……う」
「じゃ、またな」
爽やかに笑った恭ちゃんは、ドアを開けて車に乗りこむ。
そして無言のまま立ち尽くす私に、軽く微笑んで車を走り出させた。
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