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かと言って、市倉さんの連絡先は分からないし、どうすることも出来ない。
困惑しつつ木嶋屋の暖簾をくぐると、カウンターに突っ伏している千波の背中が見えた。
「いらっしゃい」
そう言いながらも、大吾さんは千波を指さして首を横に振る。
「まさかもう潰れてるんですか?」
「うん。夕方3時半頃にまだ仕込み中だってのにここに来て、飲んだくれてこのザマだよ」
「……珍しいですね、千波らしくない」
しかし私の声に反応したのか、千波は身体を起こすと振り向きざまに声をあげた。
「佳奈ぁぁー、待ってたよぉぉ」
「ど、……どしたの?」
そう尋ねながら千波の隣に腰かけると、彼女は私をおもむろに抱きしめた。
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