Act.2

6/36
前へ
/36ページ
次へ
かと言って、市倉さんの連絡先は分からないし、どうすることも出来ない。 困惑しつつ木嶋屋の暖簾をくぐると、カウンターに突っ伏している千波の背中が見えた。 「いらっしゃい」 そう言いながらも、大吾さんは千波を指さして首を横に振る。 「まさかもう潰れてるんですか?」 「うん。夕方3時半頃にまだ仕込み中だってのにここに来て、飲んだくれてこのザマだよ」 「……珍しいですね、千波らしくない」 しかし私の声に反応したのか、千波は身体を起こすと振り向きざまに声をあげた。 「佳奈ぁぁー、待ってたよぉぉ」 「ど、……どしたの?」 そう尋ねながら千波の隣に腰かけると、彼女は私をおもむろに抱きしめた。
/36ページ

最初のコメントを投稿しよう!

257人が本棚に入れています
本棚に追加