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すると彼は私の問いかけに答えることなく、逆に聞いた。
「佳奈ちゃんは? 何の仕事してるの?」
「あ、私は小さなウェブデザイン工房でイラストレーターとして働いています」
「ふぅん。絵が得意なんだ」
「子供の頃は漫画家になりたかったけど、才能なくて諦めたんですけどね」
ペロリと舌を出して、おどけて見せるけれど、彼は笑わなかった。
笑ってくれた方がいいのにと思っていると、彼は柔らかな声で呟く。
「本当につきたい職業につける人なんて、一握りだよ。俺だってそうだったし」
「そうなんですか? 誉さんは何になりたかったんです?」
「俺は……普通のおじさんになりたかった」
「……え?」
唖然とした私の反応に、誉さんは楽しそうに笑っている。
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