Act.4

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慌てて見つめた画面には誉さんの名が表示されていた。 「もっ、もしもしっ!」 「あ、佳奈ちゃん今、駐車場まで帰って来たんだけど」 「はいっ」 「着替えてから行くね」 「はい! おっ、お待ちしておりますっ!」 恭ちゃんの電話と入れ替わりだったせいか、やけに緊張しながらそう答えると電話の向こうで誉さんが笑った。 「ビール買って来たから」 「あっ! ありがとうございます」 誉さんにそう言いながら情けなくなる。 次の約束に繋げるための、大切なツールであるビールを買うことを忘れていたのだから。 28歳にもなって自分の余裕の無さが無性に恥ずかしく思った。 確かに恭ちゃんも大吾さんも誉さんも、私より6歳も年上だから大人なのは仕方ないけれど。 私が今まで恋愛においてうまく行かなかった原因は、こういうことなのかもしれないと思った。
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