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その日の仕事を終えた私は、会社から直接木嶋屋へと向かった。
店の格子戸を開けると、やはりカウンターに突っ伏している千波の背中が見える。
「佳奈ちゃん、いらっしゃい」
「大吾さんこんばんは。とりあえずビールで」
「はいよ」
私と大吾さんのやり取りで、ムクリと起き上がった千波はどこか疲れ切ったような表情を向けた。
「どーしたの? また何かあった?」
私の問いかけに千波は深いため息を吐き出す。
「例の不倫男、奥さんのサインが入った離婚届持って来た」
「え? それで千波はどうするの?」
「嫌に決まってんじゃん。一度浮気した男は絶対また同じこと繰り返すもの」
「……そうかな?」
首を傾げた私の前に、大吾さんが運んできたビールが置かれる。
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