Act.4

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確かにSAKURAシステム開発のシステム課は様々な分野にシステム導入をしているから、誉さんが所属する課は情報収集もしているのかもしれない。 だけど……情報漏えいを何よりも恐れるシステム開発会社の社員が、次期県会議員選挙について、いくら当事者の恭ちゃんと知り合いであると分かっていても簡単に口にするものだろうか? そんな疑問を感じて押し黙ってしまった私の表情を誉さんは敏感に悟ったのかもしれない。 まるでその場を誤魔化すように話始めた。 「俺ね、実は子供の頃にこのあたりに住んでいたことがあったんだ。だから我妻も知っているし、木嶋も知っていた」 「えっ?」 「だけどこの街で暮らしたのは、ほんの1ヶ月だったし、たぶん彼らは俺のことは覚えていないと思う」 ずっと東京だったと言っていた誉さんが、子供の頃にこの街に住んでいたなんて打ち明けられて、私は驚きが隠せなかった。
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