Act.4

28/36
189人が本棚に入れています
本棚に追加
/36ページ
しかし彼の言葉の節々に何か大きな謎も同時に感じて、私は問いかけた。 「1ヶ月で引っ越しなんて珍しいですね。仮住まいか何かだったんですか?」 すると私の質問に誉さんは、どこか遠い目をしたまま答える。 「住み続けることが不可能になったから、かな」 「……どうして?」 途轍も無い不安が押し寄せる感覚を覚えながら私は尋ねた。 彼もこみ上げる緊張を飲み込むようにビールを一口、喉にくぐらせると、グラスをテーブルに置き、ゆっくりとその視線を私に向けた。 遠くに聞こえる鈴虫の声と、わずかな空白の時間を挟んだ彼はその唇を動かす。 「俺の家族はこの街には、馴染めなかったんだろうね」 「……えっ……?」
/36ページ

最初のコメントを投稿しよう!