Act.6

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やはり螻蟻潰堤というコラムニストは誉さんなのだろうか。 天井を見上げて深いため息を吐き出していると、正面のセキュリティゲートを抜けて来る誉さんの姿が見えた。 慌てて壁に預けていた背中を離し、手櫛で髪を整える。 「佳奈ちゃん、お待たせ。どこにランチに行く?」 「あ……」 神殿なんて呼ばれる空間で仕事をしている誉さんだ。 きっと忙しいに違いない。 それでもここにやって来てくれたことが嬉しくて言葉が詰まる。 だけどそんな誉さんに少しでも時間を無駄にさせたくなくて私は顔をあげた。 「ここからだったら駅前あたりが近くていいですよね」 「そうだね。あ、ラーメンでも行く?」 「え? ラーメンですか?」 「うん」 どうせならもっとお洒落なお店に行きたいところだけど、時間がない彼にしてみたらその方がいいのかもしれない。
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